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みなし残業とは?違法になるケース・メリットデメリット・計算方法

みなし残業とは?違法になるケース・メリットデメリット・計算方法

みなし残業制度とは、給与に一定時間分の残業代をあらかじめ含めて支払う制度で、一般的に「固定残業代制」と呼ばれます。
この制度は、適切に運用されれば従業員と企業の双方にメリットがありますが、誤った運用は違法となるため注意が必要です。

本記事では、みなし残業の基本的な仕組みから、混同されやすい「みなし労働時間制」との違い、具体的なメリット・デメリット、そして自身の給与が適正かを確認するための計算方法まで、網羅的に解説します。

みなし残業(固定残業代制)とは?基本的な仕組みをわかりやすく解説

みなし残業とは、通称であり、法律上は「固定残業代制」という賃金制度を指します。
その意味は、実際の残業時間に関わらず、あらかじめ定めた一定時間分の残業代を固定額で給与に含めて支払う仕組みのことです。
この制度の目的は、残業代計算の効率化や従業員の所得安定にありますが、その定義やルールを正しく理解しないと、トラブルの原因となり得ます。

ここでは、その基本的な仕組みをわかりやすく解説します。

給与にあらかじめ一定時間分の残業代が含まれる制度のこと

固定残業代制は、毎月の給与の中に、例えば「20時間分」といった一定の時間外労働に対する手当を含んで支払う制度です。
この手当は「固定残業代」や「みなし残業手当」などの名称で、基本給とは明確に分けて支給されます。

重要なのは、基本給の中に残業代を含む、いわゆる「込み」の契約は原則として認められない点です。
給与明細などで、基本給と固定残業代が明確に区別されている必要があります。

実際の残業がなくても固定残業代は満額支払われる

固定残業代制の大きな特徴は、実際の残業時間が0時間であったり、あらかじめ定められた時間より少ない場合でも、固定残業代は減額されることなく満額が支払われる点です。
例えば、固定残業時間が20時間と設定されている月に、全く残業をしなかったとしても、20時間分の固定残業代は0円にならず、全額受け取れます。
これにより、月々の残業時間に給与が左右されず、収入が変動しにくいというメリットがあります。

設定時間を超えて働いた分の残業代は追加で請求できる

固定残業代制は「定額で残業させ放題」の制度ではありません。
あらかじめ設定された固定残業時間を超えて残業した場合、企業はその超過分の残業代を追加で支払う義務があります。
例えば、固定残業時間が20時間の契約で月に30時間残業した場合、企業は差額の10時間分の残業代を別途支払わなければなりません。

もし、超過分が多い、あるいは増える一方なのに支払われない場合は違法となります。

「みなし労働時間制」とは別物!2つの制度の決定的な違い

「みなし残業制(固定残業代制)」と「みなし労働時間制」は、名称が似ているため混同されがちですが、全く異なる制度です。
固定残業代制は「残業代の支払い方」に関するルールであるのに対し、みなし労働時間制は「労働時間の計算方法」に関するルールです。

この違いを理解していないと、自身の働き方や給与計算が適正かどうかを正しく判断できません。
ここでは、2つの制度の決定的な違いを解説します。

固定残業代制:実労働時間に基づいて残業代を計算する

固定残業代制は、あくまで実際の労働時間を正確に把握することが前提となる制度です。
タイムカードなどで記録された実労働時間に基づき、設定された固定残業時間を超えた分については、追加で残業代を計算し支払います。
この制度は、特定の職種に限らず、原則としてすべての労働者が対象となり得ます。

重要なのは、労働時間の管理が必須であり、その上で残業代の支払い方を定めている点です。

みなし労働時間制:実際の労働時間に関わらず所定時間働いたとみなす

みなし労働時間制は、外回りの営業職や研究開発職など、労働時間を正確に算定することが難しい特定の業務に従事する労働者に適用される制度です。
この制度の意味は、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ労使間で定めた時間をその日の労働時間とみなすという点にあります。
したがって、実労働時間が9時間でも7時間でも、原則として8時間働いたものとして扱われます。

みなし残業のメリットを従業員・企業それぞれの視点で解説

みなし残業(固定残業代制)は、適切に運用されれば、従業員と企業の双方にメリットをもたらす制度です。
従業員にとっては収入の安定、企業にとっては労務管理の効率化などが挙げられます。

ただし、これらのメリットを享受するには、制度の正しい理解と運用が不可欠です。
ここでは、それぞれの立場から見た具体的なメリットを解説します。

【従業員側】残業が少なくても毎月安定した給与を受け取れる

従業員にとって最大のメリットは、月々の残業時間の長短にかかわらず、安定した収入を得られることです。
固定残業代が含まれているため、残業が全くない月でも、定められた金額が毎月の賃金に上乗せされます。

これにより、繁忙期と閑散期で給与が大きく変動することがなくなり、生活設計を立てやすくなります。
また、効率的に仕事を進めて定時で退社すれば、実質的な時給が高まることになります。

【企業側】残業代の計算にかかる事務作業の負担を減らせる

企業側のメリットとして、給与計算における事務作業の負担軽減が挙げられます。
通常、残業代は従業員一人ひとりの毎月の残業時間を集計し、割増率を乗じて計算する必要があり、煩雑な作業です。
固定残業代制を導入すれば、設定時間を超えない限り、毎月の残業代の計算は必要ありません。

これにより、経理や人事担当者の業務効率化が図れます。
ただし、労働時間の管理義務がなくなるわけではない点には注意が必要です。

【企業側】月々の人件費を正確に予測しやすくなる

月々の人件費の見通しが立てやすくなる点も、企業にとって大きなメリットです。
残業代は月によって変動が大きく、人件費を圧迫する要因になりがちですが、固定残業代制を導入することで、残業代部分がある程度固定化されます。
これにより、特に経営資源が限られる中小企業などでは、月々の人件費を正確に予測し、安定した資金繰りや年俸制の導入、事業計画の策定がしやすくなります。

みなし残業に潜むデメリットと注意すべきポイント

みなし残業(固定残業代制)はメリットがある一方で、特に運用方法を誤ると従業員にとって大きなデメリットやリスクを生む可能性があります。
制度がサービス残業の温床になったり、不当に低い基本給が設定されたりするケースも少なくありません。

ここでは、制度に潜むデメリットと、導入されている企業で働く際に注意すべきポイントを解説します。

【従業員側】サービス残業が当たり前になる職場環境のリスク

最も注意すべきデメリットは、サービス残業の常態化です。
「固定残業代を支払っているのだから、設定時間までは残業するのが当たり前」という風潮が職場に生まれ、定時で帰りづらい雰囲気になったり、不要な残業が強制されたりするリスクがあります。

固定残業時間を超えても超過分の申請がしにくい環境では、結果的に無給での労働、つまりサービス残業につながり、長時間労働の温床となる危険性があります。

【従業員側】基本給が相場より低く設定されているケースがある

求人票で月給の総額を高く見せるために、基本給を意図的に低く設定し、その分を固定残業代でかさ増ししているケースがあります。
基本給は賞与や退職金の算定基礎となることが多いため、基本給が相場よりおかしいほど低いと、生涯年収で見たときに大きな不利益を被る可能性があります。
給与総額だけでなく、基本給と固定残業代の内訳をしっかりと確認することが重要です。

【企業側】従業員が全く残業しなくても残業代の支払い義務が生じる

企業側のデメリットとしては、従業員の実際の残業時間に関わらず、定めた固定残業代を毎月支払う義務がある点が挙げられます。
例えば、業務効率が非常に高く、ほとんどの従業員が残業せずに業務を終えている場合でも、契約で定めた固定残業代は満額支払わなければなりません。
そのため、実際の労働実態と設定した固定残業時間との間に乖離があると、人件費が割高になる可能性があります。

そのみなし残業、違法です!法律違反となる7つの危険なケース

みなし残業(固定残業代制)は、労働基準法に定められたルールを守って正しく運用しなければなりません。
しかし、実際には制度を誤解していたり、悪用していたりすることで違法状態となっているケースも少なくありません。
これから挙げる7つの危険なケースに一つでも当てはまる場合、そのみなし残業は法律違反である可能性が非常に高いです。

自身の労働条件と照らし合わせて確認してください。

ケース1:固定残業代を除いた基本給が最低賃金を下回っている

固定残業代は時間外労働に対する対価であり、基本給とは別物です。
そのため、給与総額から固定残業代を除いた金額を所定労働時間で割り、時給単価を算出した際に、国が定める最低賃金を下回っている場合は明確な労働基準法違反となります。
見かけの月給が高くても、基本給が不当に低く設定されていないか確認が必要です。

ケース2:規定時間を超えた分の残業代が一切支払われない

みなし残業制度で最も多い違法パターンが、固定残業時間を超えて働いた分の残業代が支払われないケースです。
「固定残業代を払っているから、いくら残業させても追加の支払いは不要」という考えは完全に間違いです。
例えば固定残業時間が30時間の契約で40時間働いた場合、超過した10時間分の割増賃金が支払われなければ、法律違反となります。

ケース3:雇用契約書や就業規則に固定残業代に関する記載がない

固定残業代制を有効に導入するためには、就業規則や個別の雇用契約書に、制度に関する明確な記載があることが必須です。
具体的には、固定残業代の金額、その手当に含まれる労働時間数、そして設定時間を超えた場合は追加で割増賃金を支払う旨が明記されていなければなりません。

口頭での説明のみで、契約上の根拠がない場合、その制度は無効と判断される可能性が高いです。

ケース4:給与明細に固定残業時間と金額の内訳が明記されていない

従業員が、自身の給与のうち基本給がいくらで、何時間分の固定残業代がいくらなのかを明確に区別して認識できる必要があります。
そのため、給与明細に「固定残業手当(〇時間分)〇〇円」のように、対象となる時間数と金額の内訳が具体的に記載されていなければなりません。
総額のみが記載され、内訳が不明な場合は、適正な運用とは言えず、無効と判断されることがあります。

ケース5:月45時間を超える過度な固定残業時間が設定されている

時間外労働は、36協定により原則として月45時間、年360時間という上限が定められています。
この上限を超えるような、例えば月60時間といった長時間の固定残業時間を設定することは、長時間労働を常態化させるものとして公序良俗に反し、無効と判断されるリスクが非常に高いです。
20時間、30時間、40時間といった設定は一般的ですが、月45時間が一つの大きな目安となります。

ケース6:従業員の合意なしに会社が一方的に導入している

すでに働いている従業員に対し、新たに固定残業代制を導入したり、固定残業時間を変更したりする場合、それは労働条件の不利益変更にあたる可能性があります。
そのため、会社が一方的に制度を導入・変更することは認められず、原則として対象となる従業員一人ひとりから個別の同意を得なければなりません。
就業規則の変更だけで済ませようとするのは違法となる可能性があります。

ケース7:タイムカードなどで労働時間を客観的に管理していない

企業は、固定残業代制を導入しているかどうかに関わらず、従業員の労働時間を客観的な方法で正確に把握する義務があります。
タイムカードやPCのログ、勤怠管理システムなどで始業・終業時刻を記録・管理していない場合、そもそも超過分の残業代を支払うことができず、従業員の健康を守る安全配慮義務にも違反します。
労働時間の管理を怠っていること自体が、仕事の環境として違法です。

自分の給与は適正?固定残業代が正しいか確認する計算方法

求人票や給与明細に「固定残業代3万」や「みなし残業代5万円」と書かれていても、その金額が自身の労働時間に対して適正かどうか、すぐには判断しにくいものです。
しかし、簡単な計算で支払われている固定残業代が法律で定められた最低基準を満たしているかどうかを確認できます。
ここでは、3つのステップで自身の固定残業代が適正かを確認する方法を解説します。

ステップ1:あなたの「1時間あたりの基礎賃金」を算出する

まず、残業代計算の基礎となる「1時間あたりの基礎賃金」を算出します。
計算式は以下の通りです。
「1時間あたりの基礎賃金=月給÷1ヶ月の平均所定労働時間」

ここで言う「月給」とは、基本給に役職手当などの諸手当を加えたもので、通勤手当、家族手当、住宅手当などは含みません。
また、「1ヶ月の平均所定労働時間」は「(365日-年間休日数)×1日の所定労働時間(例:8時間)÷12ヶ月」で計算できます。

ステップ2:時間外労働・深夜労働・休日労働の「割増率」を把握する

次に、労働基準法で定められている割増賃金の割増率を確認します。
残業の種類によって率が異なり、主なものは以下の通りです。
時間外労働(法定労働時間を超えた分):1.25倍以上
深夜労働(22時~翌5時):0.25倍以上(時間外労働と重なると1.5倍以上)

休日労働(法定休日の労働):1.35倍以上
固定残業代は、通常、時間外労働を対象としていますが、契約内容によっては深夜労働や休日出勤分を含む場合もあります。

ステップ3:支払われている残業代が法律上の計算額を上回っているか確認する

最後に、法律上支払われるべき最低限の残業代を計算し、実際に支払われている固定残業代と比較します。
最低限の残業代=1時間あたりの基礎賃金×固定残業時間数×1.25

この計算で出た金額よりも、実際に支払われている固定残業代の金額が同額か、それ以上であれば、その固定残業代は法的には問題ないと言えます。
もし計算額を下回っている場合は、差額を請求できる可能性があります。

企業がみなし残業を正しく導入・運用するためのポイント

企業がみなし残業(固定残業代制)を導入する際は、法律上の要件を満たし、適切に運用することが不可欠です。
あいまいな導入や運用は、従業員とのトラブルや未払い残業代請求のリスクを高めるだけでなく、労働基準監督署からの指導対象にもなりかねません。

ここでは、企業が制度を適法に導入し、正しく運用するために押さえるべき重要なポイントを解説します。

就業規則や雇用契約書へ必ず明記すべき3つの項目

固定残業代制を有効なものとするためには、就業規則や雇用契約書に以下の3点を明確に記載し、従業員に周知する必要があります。
1.基本給とは別に、時間外労働の対価として固定残業手当を支払うこと。
2.その手当の具体的な金額と、何時間分の時間外労働に相当するのか(例:固定残業代5万円(30時間分))。

3.設定した固定残業時間を超える時間外労働、深夜労働、休日労働に対しては、割増賃金を追加で支払うこと。

求人票でみなし残業について記載する際のルール

2024年4月から職業安定法施行規則が改正され、求人募集時に固定残業代に関する明示がより厳格に義務化されました。
求人票には、①固定残業代の金額、②その金額に相当する時間数、③固定残業時間を超えた場合は追加で割増賃金を支払う旨、の3点を必ず記載しなければなりません。
求人票の記載内容については「求人票の制作方法」で詳しく紹介しています。

これらの情報を正確に開示することで、求職者との認識の齟齬を防ぎ、ホワイトな採用活動につながります。

従業員の労働時間を正確に記録・管理する義務を果たす

固定残業代制を導入しても、企業の労働時間管理義務は一切免除されません。
その理由は、第一に、固定残業時間を超えた分の残業代を正しく支払うため、第二に、従業員の過重労働を防ぎ健康を守る安全配慮義務を果たすためです。
タイムカード、ICカード、PCのログ記録など、客観的な方法で全従業員の始業・終業時刻を正確に記録し、労働時間を管理することが法律で義務付けられています。

みなし残業とはに関するよくある質問

みなし残業(固定残業代制)については、その仕組みの複雑さから多くの疑問が寄せられます。
特に、求人票の記載内容の解釈や、追加手当の有無、トラブル時の相談先など、具体的な運用に関する質問が目立ちます。
ここでは、営業職の方なども含め、みなし残業について多くの人が抱く平均的な疑問に回答します。

求人票の「固定残業代〇時間分を含む」は、毎月その時間分は残業必須という意味ですか?

いいえ、残業を義務付けるものではありません。
この記載は、あくまで給与に何時間分の残業代が含まれているかを示すもので、残業の目安にはなりますが、その時間分の残業を強制する意味はありません。
実際の残業が設定時間より少なくても固定残業代は全額支払われます。

みなし残業代が支払われていれば、深夜や休日に働いても追加の手当は出ませんか?

いいえ、原則として追加の手当が支払われます。
通常の固定残業代は、法定時間外労働を対象としています。
深夜労働(22時~5時)や法定休日労働には、それぞれ法律で定められた別の割増率が適用されるため、固定残業代とは別に差額分の割増賃金を請求できます。

超過分の残業代が支払われない場合、どこに相談すればよいですか?

まずは給与明細やタイムカードのコピーなど証拠を集め、社内の人事部やコンプライアンス窓口に相談しましょう。
社内での解決が難しい場合は、各都道府県の労働局や労働基準監督署内にある「総合労働相談コーナー」に相談するのが有効です。
匿名での相談も可能です。

まとめ

みなし残業とは、実際の残業時間に関わらず一定時間分の残業代を給与に含めて支払う「固定残業代制」のことです。
この制度は、設定時間を超えて働いた分の残業代は追加で支払われ、実際の残業がなくても固定部分は満額支給されるのが原則です。
しかし、基本給が不当に低い、超過分が支払われないなど違法な運用も散見されるため、正しい知識を持つことが重要です。

企業は法律を遵守し、労働者は自身の給与が適正かを確認することが求められます。

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 アイチャッチ

この記事を書いた人

BE GOOD編集部(監修:株式会社bサーチ 代表取締役社長 高田 嘉範)

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本記事は、株式会社bサーチ代表取締役社長・高田嘉範の監修のもと、採用支援の現場で蓄積された実績・データ・知見をもとに構成しています。Indeedをはじめとした求人媒体運用や採用支援を通じて得たリアルな情報をもとに、実務に活かせる内容をわかりやすく解説しています。
専門性と実用性の両立を重視し、「読んで終わり」ではなく、実際の行動につながる情報をお届けします。

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