退職理由の伝え方【例文一覧】会社・面接で使える本音と嘘

退職を決意したものの、会社への伝え方に悩む方は少なくありません。
円満退職を実現し、その後の転職活動を成功させるためには、引き止められない退職理由の伝え方が重要です。

この記事では、会社や面接の場面で使える、本音と建前を使い分けた退職理由の例文を紹介します。
キャリアアップなどの前向きな理由を軸に、本音をどう伝えるか、あるいは嘘も方便としてどう活用するかがポイントとなります。
引き止めにあいにくい理由を準備し、次の仕事へのステップを目指しましょう。

退職理由を伝える際に嘘は許される？

退職理由を伝える際、本音をそのまま言うべきか、あるいは建前としての嘘を言うべきか迷うことがあります。
結論から言えば、円満退職を目的とするならば、必ずしも本音を伝える必要はありません。
法律上、詳細な退職理由を報告する義務はなく、会社側もトラブルなく手続きを進めたいと考えている場合が多いです。

重要なのは、人間関係の悪化や給与への不満といったネガティブな本音を、相手が納得しやすい前向きな理由に変換して伝える工夫です。
嘘の理由を言うというより、トラブルを避けるための伝え方を意識することが肝心です。

法律上、本当の退職理由を伝える義務はない

労働者が会社を退職する際に、法律上、具体的な退職理由を詳細に報告する義務はありません。
民法第627条では、労働者はいつでも解約の申し入れができると定められており、退職の自由が保障されています。
労働基準法にも、退職理由の告知を義務付ける規定は存在しません。

そのため、会社から執拗に理由を聞かれたとしても、詳細に答える必要はなく、「一身上の都合」で通すことが可能です。
ただし、円満退職を目指す上では、相手を納得させるための説明が求められる場面もあります。
その場合でも、本音をすべて話す必要はなく、差し支えない範囲で伝えることが基本となります。

会社側も円満な退職を望んでいるケースが多い

多くの会社は、従業員の退職に際してトラブルが発生することを望んでいません。
退職者との関係が悪化すると、他の従業員のモチベーション低下につながったり、SNSなどで企業の評判が下がったりするリスクがあるためです。
会社を辞める際にポジティブな理由を伝えることで、上司や人事担当者も手続きをスムーズに進めやすくなります。

たとえ本音が会社への不満であったとしても、建前として前向きな理由を伝えることで、会社側も納得しやすくなります。
お互いにとって後味の悪い別れ方にならないよう、円満な退職を意識したコミュニケーションが重要です。

必要なのはトラブルを避けるための伝え方

退職理由を伝える上で最も重要なのは、会社との無用なトラブルを避けるための伝え方を意識することです。
本音をストレートにぶつける言い方は、感情的な対立を生み、円満退職を難しくする可能性があります。
特に、人間関係や待遇への不満といったネガティブな理由は、相手に改善を期待させる隙を与え、引き止めの口実になることも少なくありません。

退職の意思が固いのであれば、個人的な事情やキャリアプランといった、会社側が介入しにくい理由を説明するのが賢明です。
NGな答え方を避け、相手への配慮を欠かさない丁寧な相談の姿勢が、スムーズな退職につながります。

多くの人が抱える退職理由の本音とは？

退職を考えるきっかけは人それぞれですが、多くの人が抱える本音の理由には共通の傾向が見られます。
厚生労働省の調査など、様々なランキングデータを見ると、人間関係の悩みや労働条件への不満が常に上位に挙げられます。
具体的には、給与の低さ、長時間労働、休日の少なさ、そして上司や同僚との関係性が主な退職理由です。

また、仕事内容へのミスマッチや、会社の将来性への不安、自身の成長が見込めないといったキャリアに関する悩みも、退職を決意する大きな要因となっています。
これらの理由には、単純な不満だけでなく、現状を変えたいという前向きな動機も含まれています。

本音の理由1：上司や同僚との人間関係

退職理由の本音として、上司や同僚との人間関係の問題は非常に多く挙げられます。
上司と合わない、高圧的な態度を取られるといったパワハラに近い状況や、同僚からの嫌がらせや孤立といったハラスメントは、働く上で深刻なストレスの原因となります。

また、特定の人との関係だけでなく、チーム全体の雰囲気が悪かったり、社内のコミュニケーションが不足していたりすることで、会社への不信感が増大するケースも少なくありません。
人間関係の悪化は精神的な負担が大きく、仕事のモチベーションを維持することが困難になるため、働く環境を変えたいと考える直接的な引き金になります。

本音の理由2：給料が低い・残業が多いといった労働条件

給与や労働時間といった労働条件への不満も、代表的な退職理由の一つです。
自身の仕事内容や成果に対して給与が見合っていないと感じる場合や、同業他社と比較して年収が低い場合、働く意欲の維持は難しくなります。
また、恒常的な長時間労働や休日出勤、達成が困難なノルマなども心身を疲弊させます。

特に、サービス残業が常態化しているなど、賃金が正当に支払われない状況は会社への不満を大きくします。
生活の基盤である給与や、心身の健康を維持するための労働環境に問題があれば、より良い条件を求めて転職を考えるのは自然な流れです。

本音の理由3：やりがいを感じない・仕事内容が合わない

仕事内容そのものに対するミスマッチも、退職を考える大きな要因です。
日々の業務が単調でやりがいを感じられない、自分のスキルや興味と仕事内容が合わないといった状況は、仕事へのモチベーションを低下させます。
また、入社前に聞いていた話と実際の業務内容が異なっていたり、十分な裁量を与えられず、自分の意見が全く反映されなかったりすることも不満につながります。

何のためにこの仕事をしているのかわからない、このまま続けても成長できるのか難しいと感じ始めると、より自分らしく働ける環境や、専門性を高められる仕事を求めて転職を検討するようになります。

本音の理由4：会社の将来性や評価制度への不安

会社の将来性や人事評価制度に対する不安も、社員が退職を考えるきっかけとなります。
業界全体の縮小や会社の業績悪化が続いていると、このまま働き続けても大丈夫だろうかと不安になります。
最悪の場合、倒産や事業所の閉鎖といったリスクも考えなければなりません。

また、評価制度が不透明で、頑張りが正当に評価されないと感じることも大きな不満につながります。
昇進や昇給の基準が曖昧であったり、上司の主観に左右されたりする環境では、長期的なキャリアを築くことが難しいと判断し、より安定した経営基盤や公平な評価制度を持つ会社への転職を考えるようになります。

本音の理由5：自身のキャリアアップや成長が見込めない

現在の職場でこれ以上の成長が見込めないと感じることも、有力な退職理由の一つです。
日々の業務がルーティンワークばかりで新しいスキルが身につかない、より専門的な知識や経験を積みたいのにその機会がない、といった状況はキャリアの停滞を意味します。

また、社内に目標となる先輩や上司がおらず、数年後の自分の姿を想像できない場合も、転職を考えるきっかけとなります。
このまま会社にいても自分の市場価値は上がらないのではないかという危機感から、より挑戦的な環境や、自身の目指すキャリアパスを実現できる企業への転職を決意するのです。

【会社向け】引き止められない退職理由の伝え方と例文

会社に退職の意思を伝える際は、引き止められにくく、かつ円満に話を進められる理由を準備することが重要です。
退職面談では、不満やネガティブな本音をストレートに伝えるのではなく、キャリアプランや家庭の事情といった、会社側が介入しにくい個人的な理由を軸に話を進めるのが基本です。

相手に「それなら仕方ない」と思わせるような、納得感のある伝え方を心がけることで、スムーズな退職手続きにつながります。
有給消化の交渉なども含め、最後まで良好な関係を保ちながら退職日を迎えられるよう、伝え方を工夫しましょう。

【本音】人間関係が悪い人向けの伝え方・例文

人間関係の悩みで精神的に限界を感じていても、それを直接的な退職理由として伝えるのは避けるべきです。
特定の個人への不満を口にすると、トラブルに発展したり、部署異動などを提案されて引き止められたりする可能性があります。
「新たな環境で自身の能力を試したい」「前々から興味のあった〇〇の分野に挑戦したい」といった、前向きなキャリアチェンジを理由にするのが無難です。
あくまで自己実現のための転職であるという姿勢を貫くことで、会社側も引き止めにくくなります。

例文：「以前から興味を持っていた〇〇業界への転職を考えております。現職で得た経験を活かし、新たな分野で自分の可能性を試したいという思いが強くなりました。」

【本音】給与に不満がある人向けの伝え方・例文

給与への不満が本音の退職理由であっても、ストレートに「給料が安いから辞めます」と伝えるのはマイナスイメージを与えかねません。
交渉の余地があると捉えられ、一時的な昇給を提示されるなど、引き止めの口実になる可能性もあります。
そうではなく、「自身のスキルや経験を、より正当に評価していただける環境で挑戦したい」「成果が報酬に反映される〇〇のような分野で実力を試したい」といった、自己成長と評価を結びつけた伝え方が効果的です。

あくまで自分の市場価値を高めたいという前向きな姿勢を示すことで、相手も納得しやすくなります。
例文：「これまでの経験を活かし、より専門性を高められる環境に身を置きたいと考えています。成果が明確に評価される分野で、自分の力を試したいという思いが強くなりました。」

【本音】残業が多くて辛い人向けの伝え方・例文

残業の多さや長時間労働が原因で退職を決意した場合、体調不良を理由にすることも一つの方法ですが、伝え方には注意が必要です。
単に「体調が悪い」とだけ伝えると、休職や時短勤務を提案される可能性があります。
そうではなく、「最近、体調が優れない日が多く、今後のキャリアを考えた際に、まずは健康的な生活リズムを取り戻し、万全の状態で仕事に集中できる環境を整えたい」といった、将来を見据えた伝え方が有効です。
自己管理の一環として働き方を見直したいというニュアンスを伝えることで、会社側も個人の健康を優先せざるを得ず、引き止めにくくなります。

例文：「今後のキャリアを考え、一度自身の働き方を見直したいと考えております。
まずは健康管理を徹底し、より良いパフォーマンスを発揮できる環境で仕事に取り組みたいです。」

【本音】仕事内容が合わない人向けの伝え方・例文

仕事内容が自分に合わないと感じている場合、「仕事がつまらない」といったネガティブな表現は避けましょう。
代わりに、「現職で経験を積む中で、本当にやりたいことが明確になった」というポジティブな理由に変換するのが効果的です。
例えば、「営業職を経験する中で、顧客の課題を分析し解決策を提案するマーケティングの仕事に強い関心を持つようになりました」のように、具体的な職種や分野を挙げることで、キャリアチェンジへの強い意志を示すことができます。
現在の仕事を通じて新たな目標が見つかったというストーリーにすることで、上司も応援しやすくなります。

例文：「現在の業務を通じて、〇〇という分野に強い関心を持つようになりました。今後はその分野での専門性を高めていきたいと考えており、転職を決意いたしました。」

【本音】会社の将来性が不安な人向けの伝え方・例文

会社の将来性に不安を感じて退職する場合でも、会社の批判と受け取られるような伝え方は避けるべきです。
前の会社への不満を理由にするのではなく、あくまで自身のキャリアプランを軸に話すことが重要です。
例えば、「自身の専門性を高めるために、より成長性の高い〇〇の分野で挑戦したい」といった、前向きな転職理由を準備しましょう。
会社の状況という外的要因ではなく、自身の成長意欲という内的要因を理由にすることで、会社側も引き止めにくくなります。

この伝え方は、転職活動の面接でも応用できるため、一貫性のある退職理由の例文として活用できます。
例文：「5年後、10年後のキャリアプランを考えた際に、〇〇の分野で専門性を磨きたいという思いが強くなりました。
新たな環境でスキルアップを目指したいと考えております。」

家庭の事情（介護・結婚など）を理由にする場合の伝え方

介護や結婚、家族の転勤といった家庭の事情は、会社側が介入しにくいため、引き止めにあいにくい退職理由です。
身内の介護が必要になった、結婚を機に遠方へ引っ越すことになった、配偶者の転勤に帯同する、家業を継ぐといった理由は、個人的かつ不可抗力な事情として理解を得やすいでしょう。
伝える際は、プライベートに踏み込みすぎない範囲で、退職せざるを得ない状況を簡潔に説明します。

「大変恐縮ですが、家庭の事情により退職させていただきたく存じます」と切り出し、具体的な理由（例：親の介護のため、地元に戻ることになりました）を付け加えることで、スムーズに話が進みます。

どうしても言いたくない時は「一身上の都合」で問題なし

退職理由を詳細に話したくない場合、退職届や退職願の理由欄には「一身上の都合により」と記載すれば法的に何の問題もありません。
これは自己都合退職の場合に用いられる定型句であり、これ以上の説明を書類に書く必要はありません。
ただし、上司に口頭で退職の意思を伝える際には、理由を尋ねられるのが一般的です。

その際に「一身上の都合です」とだけ答えると、コミュニケーションを拒否していると受け取られかねません。
円満退職を目指すのであれば、差し支えのない範囲で、建前であっても相手が納得できる理由を準備しておく方が、その後の手続きが円滑に進むでしょう。

【面接向け】好印象を与える退職理由の伝え方と例文

転職活動の面接では、必ずと言っていいほど退職理由を聞かれます。
面接官は、その答えから応募者の仕事への姿勢やストレス耐性、自社とのマッチ度などを判断しようとしています。
そのため、会社に伝えた理由とは別に、面接官に好印象を与える前向きな伝え方を準備しておくことが重要です。

ネガティブな本音をポジティブな言葉に変換し、自身の成長意欲や入社後の貢献意欲につなげることで、良い評価を得ることができます。
退職理由をどう聞かれたらどう答えるか、事前にシミュレーションしておくことが、転職成功の鍵となります。

面接官が退職理由から応募者の何を知りたいのか

面接官が退職理由を質問するのは、応募者の人柄や仕事への価値観を知るためです。
具体的には、「同じ理由でまたすぐに辞めてしまわないか（定着性）」、「他責にする傾向はないか（自責性・課題解決能力）」、「会社のカルチャーや方針と合うか（マッチ度）」といった点を確認しています。
そのため、前職への不満や愚痴を述べるだけでは、ネガティブな印象を与えてしまいます。

面接官は、退職という事実だけでなく、その経験から何を学び、次にどう活かそうとしているのかを知りたいのです。
深掘りされた質問にも対応できるよう、退職理由と志望動機に一貫性を持たせ、前向きな姿勢を示すことが求められます。

ネガティブな退職理由をポジティブに変換する4つのコツ

ネガティブな退職理由を面接で好印象を与えるポジティブな内容に変換するにはいくつかのコツがあります。
まず1つ目は環境や他人のせいにせずあくまで自分の問題として主体的に語ることです。
2つ目は前職の悪口や不満を直接的に口にしないこと。

3つ目は退職理由を志望動機につなげ入社後の活躍イメージを面接官に持たせることです。
そして4つ目は単に「やりたい」というだけでなくそのためにどのような努力をしてきたかを具体的に示すことです。
これらのポイントを押さえることでネガティブな状況を成長の機会と捉える前向きな人材であるとアピールできます。

他責にしない！あくまで自分の問題として話す

退職理由を伝える際は、前職の環境や他人のせいにする他責な表現を避け、自身の課題として語ることが重要ですす。
会社が教えてくれなかった上司が悪かったといった言い方は、主体性がない、あるいは環境が変わっても同じ不満を持つのではないか、という印象を与えてしまいます。
そうではなく、自身の力不足で目標達成が難しかったより主体的に動ける環境で自分の力を試したいと考えたというように、自分自身の課題と成長意欲に焦点を当てて話すことが大切です。

特に経験の浅い新卒や20代のうちは、成長意欲を示すことで、ポテンシャルを評価してもらいやすくなります。

会社の悪口や不満を伝えるのは避ける

面接の場で、前職の悪口や不満を口にすることは絶対に避けるべきです。
たとえそれが事実であったとしても、採用担当者には「不満ばかり言う人」「入社しても同じように愚痴をこぼすのではないか」といったネガティブな印象を与えてしまいます。
人間関係のトラブルや待遇への不満が本当の理由であっても、それをそのまま伝える必要はありません。

代わりに、その経験を通じて何を学び、どのような環境で働きたいと考えるようになったのかを、前向きな言葉で語ることが重要です。
批判的な姿勢ではなく、客観的な事実と自身の考えを冷静に伝えることを心がけましょう。

入社後の活躍イメージにつながるように伝える

退職理由は、単に過去の説明で終わらせるのではなく、応募先企業への入社意欲や将来の貢献につながるように話すことが重要です。
「前職では実現できなかった〇〇に挑戦したい」「これまでの経験を活かして、貴社の△△という分野で貢献したい」というように、退職をポジティブな転機と捉え、応募先企業で新しいことに挑戦したいという意欲を示すことが効果的です。

未経験の職種に応募する場合でも、これまでの経験から得たポータブルスキルをどのように活かせるかを具体的に伝えることで、面接官に入社後の活躍をイメージさせることができます。

【例文】キャリアアップが理由の場合

キャリアアップを退職理由として伝える際は、具体性が重要です。
漠然と「成長したい」と伝えるだけでは、面接官に意欲が伝わりません。
現職ではどのような経験を積み、その上でどのようなスキルや専門性を身につけたいと考えるようになったのかを明確に説明しましょう。
そして、それがなぜ応募先企業でなければならないのか、その企業で働くことで自身のキャリアプランがどう実現できるのかを具体的に結びつけて話します。

現職への感謝も述べつつ、あくまで自身の成長のために次のステップに進みたいという前向きな姿勢を示すことがポイントです。
例文：「現職では法人営業として新規開拓のスキルを磨いてまいりました。
その中で、より顧客の課題解決に深く関わるソリューション提案に挑戦したいという思いが強くなりました。
幅広い商材とコンサルティング力を強みとする貴社でなら、自身の経験を活かしつつ、より高度な提案スキルを身につけられると考えております。」

【例文】労働環境の改善が理由の場合

残業時間の多さや休日出勤といった労働環境を理由にする場合、単に「楽をしたい」と受け取られないような伝え方が必要です。
長時間労働が常態化していた事実を客観的に伝えつつ、それが原因で業務の質や生産性にどのような影響があったかを説明します。
その上で、「より効率的に業務を進め、質の高い成果を出すことに集中できる環境で働きたい」といった、仕事への前向きな姿勢をアピールします。
労働環境の変更を求める背景に、プロフェッショナルとしてパフォーマンスを最大化したいという意欲があることを示すことで、好印象につなげることができます。

例文：「前職ではプロジェクトの特性上、月平均〇〇時間の残業が常態化しておりました。
もちろん必要な業務には全力で取り組みましたが、インプットの時間を確保することが難しく、長期的なスキルアップに課題を感じていました。
貴社のメリハリのある働き方を推奨する環境で、より集中して業務の質を高め、貢献していきたいと考えております。」

【例文】会社の業績不振が理由の場合

会社の業績不振や事業縮小といったネガティブな理由で退職する場合も、他責にするのではなく、自身のキャリアプランと結びつけて説明することが重要です。
「会社の将来性に不安を感じた」と正直に伝えつつも、それを機に自身のキャリアを見つめ直し、より安定した環境で専門性を高めたいと考えるようになった、という前向きなストーリーに転換します。
応募先企業の安定した経営基盤や成長性に触れ、そのような環境で自分のスキルを活かして貢献したいという意欲を示すことで、ポジティブな印象を与えることができます。

例文：「所属していた事業部の縮小が決まったことを機に、自身のキャリアを改めて見直しました。
これまでの経験を活かし、より成長性の高い市場で挑戦したいという思いが強くなりました。
業界をリードする貴社の安定した基盤のもとで、長期的な視点を持って事業の発展に貢献したいと考えております。」

退職理由で嘘をつく場合に気をつけるべき注意点

退職理由を伝える際に、本音とは異なる建前の理由を伝えることは珍しくありません。
しかし、いわゆる「嘘」をつく場合には、いくつか注意すべき点があります。
特に重要なのは、会社に伝える理由と、転職活動の面接で話す理由に一貫性を持たせることです。
矛盾が生じると、自身の信頼性を損なうことになりかねません。

また、SNSでの発信や同僚との会話など、思わぬところから本音が漏れてしまうリスクも考慮し、慎重に行動することが求められます。
特定の誰かに話す場合でも、その情報がどう広まるかは予測できません。

会社と面接で伝える理由に矛盾が生じないようにする

退職の際に会社へ伝えた理由と、転職先の面接で話す理由は、必ず一貫性を持たせましょう。
リファレンスチェック（前職への問い合わせ）が行われる可能性はゼロではありませんし、業界が狭い場合は思わぬところで情報がつながることもあります。
例えば、会社には「家庭の事情」と伝えたのに、面接で「キャリアアップのため」と話していると、矛盾が生じます。

もし理由を使い分けるのであれば、「新たな分野に挑戦したい」といった、どちらの場面でも通用するような、差し支えのないポジティブな理由で統一しておくのが最も安全です。
一貫した説明をすることで、自身の発言への信頼性が高まります。

SNSで本音や会社の愚痴を発信しない

退職が決まった解放感から、SNSなどでつい本音や会社の愚痴を発信したくなるかもしれませんが、これは非常に危険な行為です。
鍵をかけたアカウントであっても、どこから情報が漏れるか分かりません。
採用担当者が応募者の名前を検索してSNSをチェックすることも珍しくないため、ネガティブな投稿が見つかれば、内定に影響する可能性もあります。

また、退職後であっても、前職の機密情報や個人情報を漏洩させるような投稿は、法的なトラブルに発展するリスクさえあります。
特定の情報サイトや掲示板への書き込みも含め、インターネット上での発言には細心の注意を払いましょう。

親しい同僚にも本当の理由は慎重に話す

社内に信頼できる親しい同僚がいたとしても、本当の退職理由を話す際は慎重になることをおすすめします。
本人に悪気がなくても、何気ない会話から他の人に伝わってしまったり、それが巡り巡って上司の耳に入ってしまったりする可能性は否定できません。

特に、会社には建前の理由を伝えている場合、話に食い違いが生じると円満退職の妨げになることも考えられます。
誰にどこまで話すかは慎重に判断し、基本的には会社に伝えている理由と同じ内容を共有するのが無難です。
2025年以降も続くキャリアを考え、余計なトラブルの種は作らないようにしましょう。

円満退職を実現するための4つのステップ

円満退職を実現するためには、適切な手順とマナーを守ることが不可欠です。
感情的に退職を伝えるのではなく、計画的に準備を進めることで、会社との良好な関係を保ったまま次のステップに進むことができます。

まずは直属の上司に意思を伝え、十分な期間をもって退職日を相談し、責任をもって引き継ぎを行い、最後に関係者への挨拶を済ませる、という4つのステップを意識することが重要です。
これらの手順を丁寧に踏むことで、会社に与える迷惑を最小限に抑え、気持ちよく送り出してもらえる可能性が高まります。

ステップ1：直属の上司に最初に退職の意思を伝える

退職の意思は必ず直属の上司に最初に伝えましょう。
人事部やさらに上の役職者、あるいは同僚に先に話してしまうと直属の上司の管理能力が問われたり面目を潰してしまったりすることになりかねません。

これは組織の指揮命令系統を無視する行為と見なされ心証を悪くする原因となります。
まずは上司に「ご相談したいことがあります」とアポイントを取り他の人がいない会議室などで1対1で話す時間を作ってもらうのが無難です。
報告ではなくあくまで「相談」という形で切り出すことで相手も話を聞く姿勢になりやすく円滑なコミュニケーションにつながります。

ステップ2：繁忙期を避け、退職希望日の1〜2ヶ月前には相談する

退職の意思を伝えるタイミングは、会社の繁忙期を避けるのがマナーです。
チームが忙しい時期に退職の話を切り出すと、業務に支障をきたし、周囲に余計な負担をかけてしまいます。
また、法律上は2週間前の申し出で退職可能ですが、引き継ぎや人員補充にかかる期間を考慮すると、退職希望日の1ヶ月前から2ヶ月前に伝えるのが一般的です。

まずは会社の就業規則を確認し、退職に関する規定（例：退職日の1ヶ月前までに申し出ること）に従いましょう。
特に4月入社の新人を迎える時期などは、会社も慌ただしくなるため、余裕を持ったスケジュールで相談することが重要です。

ステップ3：後任者への引き継ぎは責任を持って丁寧に行う

退職日までの期間は、後任者への引き継ぎを責任持って丁寧に行うことが、円満退職のための重要な要素です。
自分が担当していた業務内容、進捗状況、取引先情報、トラブル事例などをまとめた引き継ぎ資料を作成し、口頭での説明と合わせて行いましょう。
後任者が決まるまでに時間がかかる場合もあるため、誰が見ても業務内容が分かるような客観的な資料を残すことが大切です。

引き継ぎ期間は業務内容にもよりますが、最低でも1週間から2週間は確保し、後任者が一人で業務を進められる状態を目指します。
最後まで責任を果たす姿勢を見せることで、会社からの信頼を損なわずに済みます。

ステップ4：関係者への挨拶をしっかり済ませて退職する

最終出社日には、お世話になった社内の人々へ挨拶回りを行いましょう。
特に、自部署のメンバーや他部署で関わりのあった人には、直接顔を見て感謝の気持ちを伝えるのが望ましいです。
直接会えない人には、メールで挨拶を送ります。

また、担当していた取引先など社外の関係者へも、後任者の紹介を兼ねて挨拶に伺うか、電話やメールで連絡を入れます。
急な退職で迷惑をかけることへのお詫びと、これまでの感謝を伝えることで、将来的にどこかで再会した際にも良好な関係を築ける可能性があります。
最後まで社会人としてのマナーを守り、気持ちよく最終日を終えましょう。

まとめ

退職理由の伝え方は、円満退職と転職成功の両方を左右する重要な要素です。
会社に退職を伝える際は、たとえ本音がネガティブなものであっても、キャリアアップや家庭の事情といった、相手が納得しやすく引き止めにくい理由に変換することが賢明です。

一方、転職の面接では、退職理由を志望動機と結びつけ、入社後の活躍を期待させる前向きな伝え方が求められます。
それぞれの場面で一貫性を保ちつつ、適切な伝え方を準備することが、スムーズな退職とキャリアチェンジの成功につながります。
本音と建前をうまく使い分け、計画的に退職プロセスを進めましょう。